部長ブログ
小児泌尿器科医からのメッセージ
SickKidsをこえて

昨日は「SickKidsをこえて」というタイトルで院内講演会があった。SickKidsとはトロント小児病院のことである。この講演会のおしらせが掲示板に張ってあるのを見て「おー、なつかしいなあ。最近はどうなったのかなあ、ちょっと聞いてみるか」と思ったのが2週間前。しかしなんのことはない、自分も演者のひとりに呼び出され思い出話をしゃべるはめになった。最近は学会でも、講演でもアカデミックな学術の話より、来し方行く末のようなトピックスを話すことが多い。これは、もう年寄りは引っ込んでろという裏返しなのかもしれない。自分で年を取ったとは思わないが、思い出話をするような人間の精神的リタイアは近い。だいたい30代ごろの自分を振り返ると、当時50代後半や60代の教授や部長の昔話で記憶に残るようなものはない。興味深いものも確かにあったが、「俺の頃は苦労したよ」みたいな自慢話をながなが聞かされたり、おもしろくもない話をくどくど聞かされたことが少なくなかった。どうせ自慢話を聞くなら若いギラギラした生意気なやつの話の方が心に火がつく。

ただ先週スライドを作るために、押し入れからいろんなものを引っ張りだしてみると結構「そうだ!」と気づき直すことがあった。今から22年前にSickKidsの手術室で書いていた手術のメモにはおおくの手術の手書き図とともに、手技の際に恩師、Dr.Churchillが言った言葉が走り書きされている。blood supply, tension free, 3 dimension exposure, これら再建手術の基本を繰り返し手術中に言われ(叫ばれ)頭にしみついていたあの頃。考えてみると今、自分がつまずいた手術の原因はそのいずれかを軽んじたためである。あの頃教わった術式のほとんどは自分流に変えたり、他の術式にしてしまったが、教わった基本は微動だにしていない。僕はこれだけのことを若手に伝えられているかと自問する。

スライドを作り進むにしたがってトロントの小児病院がすごいとか、立派とか、そういうことは自分には関係のないことで、やっぱり良き師にめぐりあえたこと、それ以外に話すことはないことに気がついた。結局自分にとってSickKidsが今でも「なつかしさ」を超えているのは、"Respect" なんだということに行き着いた。そこに尊敬できる人がいたから、尊敬できる小児泌尿器科ができていた。SickKidsが尊敬されているとすれば病院のいろんな部署にそういうヒトがいるんじゃないか?

ランキングを否定はしないが、その病院がいいとか悪いとか言うのは単にうわべの業績や経営状況だけで判断はできないと思う。粉飾決算が露呈した東芝をもちだして悪いが、歴史と業績、トップを誇るだけでは尊敬は得られない。どうしたら"Respect"されるか?それをとことん考えることこそが「こども医療」の未来を作ることになるんじゃないか。声だけ大きい支離滅裂講演の最後はトロント時代に毎日耳たこで聞かされたあの言葉で終わった。

そうそう、宣伝も忘れませんでした。トロント小児病院がマラソンなどで多くの寄付イベントを企画するのには比べようもありませんが、Run for Kids YOKOHAMA今年もスタートします。今年は市民マラソンだけでなくメイク・ア・ウィッシュ、オレンジリボンたすきリレーなどへと活動広げたいです。https://www.facebook.com/runforkids.kcmc
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